東京電力は28日、福島第一原発3号機の使用済み燃料プールにあった核燃料566体を取り出す作業を完了した。炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機で搬出を完了したのは初めて。水素爆発などで損傷した建屋に使用済み燃料が残るという危険な状態が、事故発生から10年を前に、一歩改善された。ただ、廃炉工程全体ではまだ課題が山積している。
強い放射線と熱を出す使用済み燃料を建屋から取り出すことは、廃炉の重要なステップの一つ。放射線を遮り冷却を続けるための貯蔵プールは建屋の上層階にあり、次に大地震などに見舞われると、壊れたり冷やせなくなったりするリスクがある。東電は、より安全に保管するため、敷地内の共用プールに運び出すことを計画。がれきを撤去したり、燃料取り出し用のクレーンを設けたりするなどして、2019年4月から3号機で取り出しを始めた。
3号機の建屋内は放射線量が高く、ほとんどの作業は約500メートル離れた操作室から遠隔で行われた。初期は機器やクレーンの不具合が続出。プール内に入ったがれきや取っ手が変形した燃料などもあって難航したが、最終盤には24時間態勢で作業を加速。2月28日に最後の6体を共用プールに移し終え、「20年度内」とする目標の期限まで約1カ月を残して完了した。国と東電が11年に示した当初の廃炉工程表の目標からは約3年遅れだった。
使用済み燃料は、事故時に炉心に燃料がなかった4号機では14年末に取り出しを終えている。一方、メルトダウンした1、2号機にはまだ計約1千体が手つかずで残り、東電は24年度以降の取り出し開始をめざしている。ほかに、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)が1~3号機に計約800~900トン残っている。(小坪遊、福地慶太郎)
「30~40年後に廃炉」目標、依然困難
水素爆発や炉心溶融(メルトダウン)で傷ついた東京電力福島第一原発3号機の建屋から、使用済み核燃料がすべて運び出された。事故から10年。大量のがれきや高い放射線量などの困難を乗り越え、廃炉のリスク低減は一歩前進した。だが、この先にはもっと難しい工程が待ち受ける。「30~40年後に廃炉完了」とする国と東電の目標が厳しいことに変わりはない。
使用済み燃料プールの核燃料の…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル